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筋肉ガイド

上腕二頭筋:腕の痛みと、手のひらを上にして持ち上げる動作

筋腹の症状と、肩側・肘側の腱の問題を分け、肘を曲げる力や手のひらを返す力から評価を考えます。

押さえておきたいこと

  • 症状の場所が肩の前面、上腕の筋腹、肘の前面のどこかを確認します。
  • 突然の断裂音、内出血、手のひらを上へ返す力の新たな低下があれば、早めに腱を評価する必要があります。
  • 抵抗を加えた検査で痛むだけでは、上腕二頭筋腱症やトリガーポイントを診断できません。

解剖と画像の見方

上腕二頭筋の長頭は関節窩の上方付近から、短頭は烏口突起から始まります。肘側では腱が橈骨粗面へ付着し、腱膜が前腕の筋膜へ広がります。肘を曲げるほか、手のひらを上に返す回外に大きく関与します。これらの作用を利用して負荷を比べられますが、筋肉を腱から切り離して評価することにはなりません。 [1]

筋肉と痛みの図解

上腕二頭筋

筋肉と痛みの図解

上腕二頭筋

青色は対象の筋肉を示します。×印は代表的なトリガーポイントの位置、陰影は関連痛が現れる可能性のある範囲です。これらの例は、下に番号付きで示す各ポイントと一対一に対応するものではありません。痛みの広がりには個人差があり、この図だけで原因を診断することはできません。

画像内の表記は英語です。

この図について

AIの支援を用いて作成した学習用の図です。参考図:Joe Muscolino博士、LearnMuscles。この改変図は臨床的な検証を受けたものではなく、参考図の著者による承認を示すものでもありません。

診察からわかること

ここでは医療者が行う評価を紹介します。結果の解釈と、その検査でわからないことを併せて確認してください。

経過と外見の確認
評価の方法
急に重い物を持ったか、音がしたか、内出血や筋肉の形の変化、筋力低下があるかを聞きます。抵抗を加える検査の前に、普段の症状が出る場所を確認します。
結果の活かし方
けがの後に形が変わったり著しく力が落ちたりした場合は、腱断裂が疑われます。
評価の限界
ほかの筋が補うため、肘を曲げられても上腕二頭筋遠位腱断裂は除外できません。 [2]
肘を曲げる動きと回外の比較
評価の方法
前腕を支え、軽い肘屈曲と手のひらを上に返す動作を比べます。肩の前面、筋腹、肘の前面の痛みは分けて記録します。
結果の活かし方
組み合わせてみることで詳しく調べる部位を選び、日常機能の基準を作れます。
評価の限界
上腕筋と回外筋もこれらの動作に参加します。大きな腱損傷が疑われる場合は、最大努力の検査を中止します。 [1][2]
肩と首を併せて評価する
評価の方法
肩側の症状では、自動・他動の肩の動きと腱板筋力を比べます。必要に応じて首や神経学的所見を調べ、医療者が上腕二頭筋に負荷をかける誘発テストを加えることもあります。
結果の活かし方
腱板や首の問題が重なっていれば、計画の変更につながります。
評価の限界
スピードテストや腱の溝の圧痛は、単独では診断精度が限られます。上腕二頭筋の特定の部分が痛みの原因だと確定する所見ではありません。 [3][4]

ほかに考慮する原因

上腕二頭筋遠位腱断裂

負荷をかけた際の断裂音、肘の前面の内出血、回外する力の明らかな低下が手がかりです。

次の対応: 治療を決める時期が重要になることがあるため、早めに受診してください。先に通常の筋力運動を進めないようにします。 [2]

肩側の腱や腱板の問題

肩の前面が痛む、手を伸ばすと痛む、筋腹の局所的な圧痛だけでは説明できない腱板の筋力低下がある場合です。

次の対応: 肩全体を評価し、治療に影響する場合は画像検査を検討します。 [4][3]

筋への負荷に伴う痛みや神経の関与

持ち上げる量を増やした後の筋腹の不快感は、持続する筋力低下、感覚の変化、首に関連した症状とは分けて考えます。

次の対応: 負荷の経過と動作の所見を比較します。神経学的な変化があれば、より広い診察が必要です。 [1][4]

症状に合わせた取り組み方

  1. 負担の大きいてこを短くする

    大きな損傷を伴わない負荷時痛と評価された場合は、物を体に近づけ、手のひらを上にした重い持ち上げを一時的に減らします。肩と肘は楽に動かせる範囲で動かしましょう。

    負荷の進め方: 重さを戻す前に、容易な作業を続ける時間を増やします。 [1]

  2. 曲げる力と回す力を別々に戻す

    肘を支えて軽く曲げる力を出す運動から始め、軽い重りを持ち上げる運動へつなげます。必要に応じて低負荷の回外を加え、痛む場所と翌日の反応から開始する負荷を調整します。

    負荷の進め方: 抵抗は徐々に増やします。これらは解剖に基づく運動例であり、断裂した腱や手術後の腱に対する手順ではありません。 [1][2]

  3. 評価でわかった肩の問題に対応する

    肩側の症状が腱板や腱の病変の一部なら、それに合うリハビリテーションを行います。上腕の圧痛部を繰り返し押しても、切れた腱が修復されるわけではありません。

    負荷の進め方: 筋力低下が続く、または必要な持ち上げ動作が戻らない計画では、評価を見直します。 [4][2]

経過をみるポイント

  • 同じ軽い物を、同じ腕の位置で持ち上げて比べます。
  • 肘屈曲と回外の機能を別々に確認します。
  • 主な制限が肩、筋腹、肘のどこに残るかを記録します。

受診を考える目安

  • 断裂音、内出血、筋肉の形の変化、回外する力の急な低下がある場合は、早めに受診してください。
  • 筋力低下が進む、しびれが続く、肩や肘の動きが失われる場合は医療機関に相談してください。

根拠とその限界

ここでの区別は、腱の診察と肩全体に関する根拠に基づいています。上腕二頭筋のトリガーポイント診断や、この筋だけに行うリリースの手順が検証されたという意味ではありません。

参考文献

  1. University of Washington Muscle Atlas: Biceps Brachii

    大学の解剖学資料. 筋の付着部と作用を確認するために用いています。トリガーポイントの位置や治療効果を検証する資料ではありません。この資料の図版は転載していません。

  2. AAOS OrthoInfo: Biceps Tendon Tear at the Elbow

    専門学会による診療情報. 上腕二頭筋遠位腱断裂の特徴と、適切な時期に診察を受ける必要性を扱っています。大きな損傷を伴わない負荷時痛に対する運動例は、断裂した腱や手術で修復した腱のリハビリテーション手順ではありません。

  3. Jain et al. Diagnostic Accuracy of Special Tests for Rotator Cuff Tear: ROW Cohort Study (2017)

    前向き診断精度研究. 肩の痛みがある208人を調べた研究です。肩甲下筋の検査は感度が低く、陰性でも断裂を十分には除外できません。対象は腱板と上腕二頭筋の病変であり、トリガーポイントではありません。

  4. Desmeules et al. Rotator Cuff Tendinopathy: Clinical Practice Guideline (2025)

    診療ガイドライン. 成人の腱板腱症を対象に、部分断裂を含む評価と運動療法を扱っています。全層断裂は対象外です。トリガーポイント図の妥当性を検証した資料ではありません。