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Atlas · 頸部

後頭下筋群

後頭下筋群は、頭蓋骨と環椎・軸椎をつなぐ4つの小さな筋肉です。頭を小さく動かす際の調整を助けます。後頭部の付け根を押した痛みは、頭痛や、うなずくときの痛み・動かしにくさに伴うことがあります。原因を考えるには、頭痛と周囲の頸部を合わせた評価が必要です。

後頭下筋群
身体部位
頸部
トリガーポイント
3
この筋に記載
よくある症状
3
記録されたパターン
よくある原因
3
関連する因子

筋肉の概要

症状と最初の対処

最初にできる対処

  • 物を見る作業が長くなるときは、頭と前腕を支えましょう。
  • 心地よい範囲で小さくうなずく練習をします。頭蓋骨をボールに押しつけないでください。
  • 頭痛があった日と、日常で役立つ首の動作を1つ記録しましょう。

評価を受ける目安

  • 突然、普段と違う強い頭痛が出た場合は、緊急に受診してください。新たな複視、視力喪失、平衡感覚の異常、筋力低下、話し方や飲み込みの変化がある場合も同様です。
  • 大きな外傷の後や、新しい頭痛、次第に変化している頭痛がある場合は、診察を受けてください。

下頭斜筋は第2頸椎(C2)と第1頸椎(C1)をつなぎ、頭蓋骨には付着しません。体表からの触診で、深部にある4つの筋肉を確実に分けて調べることは困難です。

診察・触診・治療の根拠

筋肉と痛みの図解

後頭下筋群

青色は対象の筋肉を示します。×印は代表的なトリガーポイントの位置、陰影は関連痛が現れる可能性のある範囲です。これらの例は、下に番号付きで示す各ポイントと一対一に対応するものではありません。痛みの広がりには個人差があり、この図だけで原因を診断することはできません。

画像内の表記は英語です。

筋肉と痛みの図解

Suboccipitals · Anatomy 1

Anatomical view of the illustrated muscle.

画像内の表記は英語です。

元のサイズで画像を開く

トリガーポイント

1. TrP1

位置。 深部の後頭下筋群に重なる、後頭部の付け根付近

トリガーポイントの分布図
後頭下筋群 — Suboccipitals · Trigger-point examples 1元のサイズで画像を開く

筋肉の領域を示す参考図です。選択した番号のトリガーポイントだけを示す図ではありません。

関連痛の分布図
後頭下筋群 — Suboccipitals · Referred-pain pattern 1元のサイズで画像を開く

筋肉の領域を示す参考図です。選択した番号のトリガーポイントだけを示す図ではありません。

関連痛。 後頭部の付け根の痛みと、それに伴う頭痛

関連痛のパターン

  • 頭の後ろ側
  • こめかみや額も痛む場合があります

この痛みが、どのように感じられるか

後頭部の付け根の痛みに伴い、こめかみや額へ広がる頭痛がみられる場合があります。うなずく動きや長く物を見る作業で、いつもの痛みが変わるかを記録します。痛む範囲だけでは頭痛の診断は決まりません。

患者さんからよく伺うお話

  • 後頭部の付け根がうずく
  • 首がこわばり、頭も痛む
  • 長く読んだ後につらくなる

症状が悪化しやすい状況

  • 物を見る作業を長く続ける
  • 上を向く
  • 頭を左右に回す
関連する運動を見る (11)

患者が訴える症状

後頭部の付け根の痛み 小さくうなずくときや、頭を動かさずにいた後に気になる場合があります。

首の不快感を伴う頭痛 痛みがどこから始まり、何を伴うかを記録します。押したときの痛みは、さまざまな頭痛の病態でみられます。

頭を左右に回しにくい 患者さん自身が動かせる範囲を比べます。C1やC2がずれていると決めつけないようにします。

よくある原因

物を見る姿勢を長く続ける 読書や作業中に姿勢がほとんど変わらないと、今の首が耐えられる負担を超える場合があります。

最近の首のけが 外傷の経験がある場合は、ストレッチや手技を始める前の検査内容が変わります。

睡眠不良や繰り返す頭痛 症状の負担が大きくなる要因にはなりますが、それだけで筋肉の病変があるとは判断できません。

臨床家と指導下の学習者向け

臨床資料

頭痛のマップは、症状が広がる可能性のある範囲を示しています。後頭下筋群に含まれる筋肉を個別に特定する図ではありません。見え方や平衡感覚の症状を説明する根拠にもなりません。

解剖と触診

解剖学的な位置関係

大後頭直筋はC2から後頭骨へ、小後頭直筋はC1の後結節から後頭骨へ走ります。上頭斜筋はC1の横突起と後頭骨をつなぎ、下頭斜筋はC2とC1をつなぎます。[2]

  • 後頭骨の正中と項線が、体表で位置を確かめる目印になります。
  • C1は深部にあります。C2は頸部後面の位置を把握する目印であり、押圧の対象ではありません。

周辺の組織。 後頭下筋群を頭半棘筋が覆っています。後頭下三角には椎骨動脈と第1頸神経後枝があり、近くを通る後頭神経が神経性の痛みに関与する場合もあります。

触診

患者さんの体位。 仰向けで頭全体を支えます。頭は中間位、または心地よく感じる軽い屈曲位に置きます。

解剖学的な目印を確認する

  • 検査者は後頭骨の隆線と正中をそっと確かめます。
  • 隆線のすぐ下の軟部組織を目印にします。深部のC1を探るような触れ方は避けます。

診察の手順

  1. 指の腹を広く当て、ごく軽い圧にとどめます。
  2. 検査者は左右を比べ、押した痛みが今回訴えている痛みと同じかを尋ねます。その後、圧をかけるのをやめます。
  3. 患者さんに小さくうなずく動きをもう一度行ってもらい、触診所見と実際の動作を結びつけて考えます。

所見を記録する

  • 局所が敏感なことや、いつもの痛みが再現されることは、頸部周辺の問題を考える手がかりになる場合があります。
  • 頭皮に電気が走るような感覚は、神経が刺激されている可能性を示します。望ましいリリース反応ではありません。

限界と注意点

  • 深く探るような触診や、力を加えた回旋は行いません。自宅で後頭下三角を押し込むことも避けてください。
[2][3]

診察と検査

2

同じ課題で比べる、患者さん自身による頸部回旋[3]

鏡を見る、体の横へ視線を向けるといった動作に必要な可動範囲を測ります。

体位
座って体幹を支え、正面を向きます。
手技
患者さんは体幹を回さず、頭をゆっくり左右に向けます。検査者は角度、いつもの痛みが出る場所と出始める時点を記録します。同じ開始姿勢から、実際に必要な課題を無理のない速さでもう一度行います。
陽性所見
繰り返しても同様の痛みが出る、または片側の回旋範囲が狭いという所見です。トリガーポイント陽性と一括りにせず、実際に確認した内容を記録します。
解釈
局所の痛みを参考に、動かす範囲や練習量を調整します。腕へ広がる症状がある場合は、神経系の評価が必要です。
限界
回旋には複数の筋肉と関節が働きます。この結果だけで、後頭下筋群が唯一の原因とは判断できません。

検査者が行う頸部屈曲回旋テスト[4][3]

この検査が適する頭痛症状で、上位頸椎の回旋制限を評価します。

体位
仰向けになり、検査者が検査中ずっと頭を支えます。
手技
実施できない条件がないかを確認した後、検査者が首を耐えられる範囲まで曲げ、左右の回旋を穏やかに調べます。可動範囲と、いつもの痛みが出るかを記録します。屈曲に耐えられない場合は実施しません。
陽性所見
同じ側で制限が再現され、いつもの症状を伴う場合は、上位頸椎が動きにくい状態を考える所見になります。
解釈
頭痛の病歴と患者さん自身の動きも合わせて判断します。筋肉を1つに絞り込んだり、頭痛の機序を証明したりする検査ではありません。
限界
動きの終わりで無理に力を加えず、血管の安全性を確認する検査として使わないでください。選ばれた研究対象者から得た基準値は、誰にでも使える自己検査の基準ではありません。

ほかの原因との鑑別

片頭痛または緊張型頭痛[5][3]

判断に役立つ所見。 繰り返す頭痛に、光・音への過敏さ、吐き気、活動によるつらさ、両側を圧迫される感じが伴う場合があります。首を押した痛みも同時にみられることがあります。

次の対応。 頭痛の病歴と日誌を活用します。繰り返す頭痛や生活に支障を来す頭痛は、医療機関で評価を受けてください。

上位頸椎の関節に関連する痛み[4]

判断に役立つ所見。 首を動かすと、いつもの頭痛が繰り返し誘発され、上位頸椎の動きも制限されています。

次の対応。 頭痛と頸部を合わせて評価します。触診だけでは、関節の痛みと筋肉の痛みを区別できません。

前庭系・視覚系・血管の病気[5]

判断に役立つ所見。 新たな回転性めまい、複視、視力喪失、平衡感覚の異常、話し方の変化などがあっても、筋肉に原因があると判断する根拠にはなりません。突然、普段と違う頭頸部痛が出た場合も同様です。

次の対応。 急性の神経症状や視覚症状がある場合は、緊急の評価が必要です。それ以外の症状が続く場合も、前庭機能や眼の状態を適切に調べます。

治療の選択と進め方

運動とリハビリテーション

困っている動作に向けて、楽な範囲で動かす[3]

検討する場面。 動作に伴う首の痛みについて、評価を受けた方。

頭を枕に預け、「はい」と小さくうなずくように動かします。頭を持ち上げたり、後ろへ強く押しつけたりしないでください。終わったら力を抜いて開始位置へ戻します。

実施量と見直し
開始量の一例は、ゆっくり3〜5回を1日1回です。症状が出やすい場合は、動く範囲を小さくします。
段階的な進め方
まず心地よく動ける範囲を広げ、その後、楽なうなずきや短い読書を練習します。当日の遅い時間帯と翌朝に症状を確認し、次回の量を決めます。
中止・再評価の目安
新たな強い頭痛、見え方の異常、めまい、腕の症状、または練習後も続く悪化がある場合は中止してください。
根拠と限界
頸部を対象としたガイドラインは、能動的なリハビリテーションを支持しています。これは臨床で応用した練習例です。特定の筋肉に対する効果を示す根拠ではありません。

セルフケアと活動

頭の位置が長く変わらない作業を調整する[3]

検討する場面。 読書や近い距離での画面作業中に、症状が積み重なってくる方。

見ている物を楽な位置へ移し、前腕を支えます。作業の合間に、短く心地よい動きを取り入れましょう。枕は朝の楽さを目安に高さを選びます。首のカーブを一律に決めて選ぶ方法ではありません。

実施量と見直し
いつもの作業で実行しやすい変更を1つ選び、数日間試します。
段階的な進め方
楽に続けられる作業時間を少しずつ延ばし、日常動作に役立った工夫を続けます。
中止・再評価の目安
悪化が続く、新しい頭痛の特徴が出る、大きな外傷の後に症状が生じた場合は、再評価が必要です。
根拠と限界
頸部のケアに関する助言を、実際の作業に応用した方法です。読書や頭の回しやすさ、朝の症状を手がかりに、役立っているかを判断します。

臨床の専門家によるケア

頸原性頭痛に対する頸椎モビライゼーション[7]

検討する場面。 頭痛と頸部について事前評価を受け、頸原性頭痛と判断された方。症状に関連する頸部可動制限がある場合です。

訓練を受けた医療者が、耐えられる範囲の、急なスラストを伴わない頸椎関節モビライゼーションと、首の動きを自分で調整する練習を選ぶ場合があります。頭痛の日数と強さに加え、いつもの頭を回す課題も評価します。後頭下部の圧痛だけでは頭痛の診断はできません。

実施量と見直し
200人を対象とした試験では、6週間に8〜12回、1回30分以内の通院治療を行いました。担当者と治療計画を相談し、延長する前に頭痛と動きの変化を見直します。
段階的な進め方
期間を区切り、頭痛日誌を見直し、頭を回す動作をどの程度無理なく行えるか確認します。自分で動きを調整でき、日常動作が改善してきたら、手技によるケアを減らしていきます。
中止・再評価の目安
普段と違う強い頭痛、新たな神経症状、視覚症状、平衡感覚の異常が出たら、中止して評価を受けてください。繰り返すたびに頭痛が悪化する操作は続けません。
根拠と限界
試験では、手技または低負荷運動による頭痛の頻度・強さの改善が12か月まで認められました。両者の併用は、いずれか単独より統計学的に優れてはいませんでした。手技群では関節モビライゼーションと高速のマニピュレーションの両方が認められていました。この結果は、スラストを伴わないモビライゼーションだけに帰せません。後頭下筋群だけをマッサージした効果も示していません。

臨床の専門家によるケア

評価済みの頸原性頭痛に対するドライニードリング[6][2]

検討する場面。 頸原性頭痛が続き、頸部筋の圧痛を含む症状について臨床評価を受け、能動的なケアに補助治療を加えたい方。

相応の訓練を受けた医療者と、頭痛リハビリテーションにドライニードリングを組み込むか検討します。処置する部位は診察後に選びます。アトラス上の印だけでは、処置の計画は立てられません。

実施量と見直し
期間を区切った試行とし、頭痛と機能の評価項目をあらかじめ相談して決めます。引用した研究の治療スケジュールは、全員に当てはまる標準コースではありません。
段階的な進め方
治療後と経過観察時に、頭痛の強さ、読書や頭を回す動作への耐えやすさを確認してから、再度行うかを判断します。
中止・再評価の目安
普段と違う強い頭頸部痛や神経症状が出たら中止します。処置を計画する際は、深部の神経・血管の位置関係を考慮する必要があります。
根拠と限界
69人を対象にしたランダム化研究では、頸部筋へのドライニードリング追加を調べました。痛みと生活上の支障について、上乗せ効果が6か月まで報告されています。ただし、臨床的な意味のある差は小さく、頭痛の頻度には有意差がありませんでした。後頭下筋群の効果を、同時に治療した他の筋肉から分けて検討した研究ではありません。

再評価と経過観察

  • 同じ方法で、楽な範囲のうなずきと回旋の可動範囲を再評価します。
  • 頭痛の強さ、頭痛があった日数、読書への耐えやすさを比べます。押した痛みだけで効果を判断しないようにします。
  • 同じ枕や頭の支えを使い、横になった姿勢をどの程度保てるか記録します。後頭部の付け根が痛くて目が覚めることも記録します。

根拠と出典

  1. University of Utah: Deep Back and Suboccipital Region

    2014 · 大学の解剖学教育資料

    筋肉の付着と層構造を確認する資料です。特に板状筋を取り上げ、頭蓋骨に付着する筋と頸椎に付着する筋を区別しています。

  2. Anatomy, Head and Neck, Suboccipital Muscles

    2023 · 解剖学の参考資料

    4つの筋肉と椎骨動脈の位置関係を示します。解剖学的につながっていることだけで、頭痛や視覚症状の機序が分かるわけではありません。

  3. Blanpied et al. Neck Pain: Revision 2017

    2017 · 診療ガイドライン

    頸部全体の評価と、複数の方法を組み合わせた能動的なケアを扱っています。ここで示す自宅練習は、個別に調整する開始例であり、試験で定められた処方ではありません。

  4. Hall et al. Comparative analysis and diagnostic accuracy of the cervical flexion-rotation test

    2010 · 診断法の比較研究

    異なる頭痛症状で、上位頸椎の動きを評価した研究です。後頭下筋を個別に特定する検査ではなく、トリガーポイントマップも検証していません。

  5. Seemungal et al. The Bárány Society position on Cervical Dizziness

    2022 · 学会の見解表明

    首から回転性めまいが生じる機序は確立されていません。前庭系や神経系の別の原因について、評価が必要です。

  6. Mousavi-Khatir et al. The Effect of Adding Dry Needling to Physical Therapy in the Treatment of Cervicogenic Headache

    2022 · 偽治療対照無作為化試験

    69人をランダムに割り付け、後頭下筋群、僧帽筋上部、胸鎖乳突筋の症状を対象にしました。痛みと生活上の支障は、6か月までドライニードリングに有利な差がありました。ただし、臨床的意義は小さい結果です。頭痛頻度の差は有意ではありませんでした。複数の筋肉を治療しているため、個々を分けた効果は分かりません。

  7. A randomized controlled trial of exercise and manipulative therapy for cervicogenic headache

    2002 · 無作為化試験

    200人を対象とした試験で、6週間に8〜12回、1回30分以内の治療を検討しました。手技では、モビライゼーションと高速マニピュレーションの両方が認められていました。頭痛の頻度・強さに対する改善は12か月まで続きました。併用は、いずれか単独より統計学的に優れてはいませんでした。後頭下筋群だけへのマッサージ効果を示す根拠ではありません。

関連するトリガーポイント