本文へスキップ
メインコンテンツへスキップ
Atlas · 胸部

小胸筋

小胸筋は、第3〜5肋骨と烏口突起をつなぐ筋肉です。腕を伸ばすときの痛みに、肩の前面の圧痛を伴うことがあります。ただし、手のしびれや力の入りにくさがある場合は、神経と血管の評価が必要です。胸の痛みについても、適切な医学的評価を受けてください。

小胸筋
身体部位
胸部
トリガーポイント
3
この筋に記載
よくある症状
3
記録されたパターン
よくある原因
3
関連する因子

筋肉の概要

症状と最初の対処

最初にできる対処

  • 症状が出やすい、頭より上での作業や荷物を運ぶ作業は、続ける時間を短くしてください。
  • 前腕を支え、腕の位置を変えるようにしてください。
  • 鎖骨の下やわきの下を、ボールで押すことは避けてください。

評価を受ける目安

  • 新たに胸が圧迫されるような感じがあり、息苦しさ、発汗、吐き気、ふらつき、腕や顎の痛みを伴う場合は、救急での診察が必要です。
  • 腕が腫れている、色が変わっている、冷たい場合や、手の力が次第に弱くなる場合は、速やかに診察を受けてください。

小胸筋後隙(小胸筋の後ろにある空間)は烏口突起の下に位置し、肋鎖間隙とは別の領域です。烏口突起の周辺に圧痛があっても、それだけで神経の圧迫が裏づけられるわけではありません。

診察・触診・治療の根拠

筋肉と痛みの図解

小胸筋

青色は対象の筋肉を示します。×印は代表的なトリガーポイントの位置、陰影は関連痛が現れる可能性のある範囲です。これらの例は、下に番号付きで示す各ポイントと一対一に対応するものではありません。痛みの広がりには個人差があり、この図だけで原因を診断することはできません。

画像内の表記は英語です。

筋肉と痛みの図解

Pectoralis Minor · Trigger-point examples 1

Representative source regions. The illustrated markers and pain pattern are not individual assignments to the numbered trigger points.

画像内の表記は英語です。

元のサイズで画像を開く

トリガーポイント

1. TrP1

位置。 胸の前面の深部で、第3〜5肋骨から烏口突起に向かう領域

トリガーポイントの分布図
小胸筋 — トリガーポイントの分布図元のサイズで画像を開く

この筋肉で共通の図です。複数のトリガーポイントが示されている場合があります。

関連痛の分布図
小胸筋 — 関連痛の分布図元のサイズで画像を開く

筋肉の領域を示す参考図です。選択した番号のトリガーポイントだけを示す図ではありません。

関連痛。 肩の前面と胸

関連痛のパターン

  • 肩の前面
  • 胸の前面

この痛みが、どのように感じられるか

肩の前面や胸の深部のうずくような痛みが、腕を伸ばす動作で変わることがあります。胸や腕の症状は、まず周辺の領域を含めて評価し、そのうえで小胸筋が関わっているかどうかを考えます。

患者さんからよく伺うお話

  • 腕を伸ばすと肩の前面が気になる
  • 腕を使うと胸のあたりがうずく

症状が悪化しやすい状況

  • 腕を伸ばす動作を長く続けること
  • 頭より上での作業
  • 荷物を運ぶこと
関連する運動を見る (7)

患者が訴える症状

肩の前面の圧痛 腕を伸ばす動作と肩の動きを比べます。烏口突起には、複数の組織が付着しています。

腕を使うと不快感が出る 負荷、腕の高さ、症状が出るまでの時間を記録します。

肩の痛みに手の症状を伴う ピリピリ感や力の入りにくさがある場合は、評価の進め方が変わります。圧痛のある筋肉が神経を圧迫している証拠にはなりません。

よくある原因

頭より上の作業の繰り返し 肩周辺や胸郭出口に関わる症状が出ることがあります。

荷物を持ち続けること 重さを調整し、症状が変わるかどうかを観察します。

胸や肩の手術 傷あと、神経、肩の問題を、それぞれ別に考える必要があります。

臨床家と指導下の学習者向け

臨床資料

胸や腕の痛みのマップだけでは、小胸筋症候群、心臓の病気、神経の損傷のいずれも診断できません。

解剖と触診

解剖学的な位置関係

小胸筋は、第3〜5肋骨の前面から烏口突起の内側・上側に向かって走り、大胸筋の深層にあります。[1][2]

  • 烏口突起は、鎖骨の外側より下にある、肩の前面の骨の目印です。
  • 第3〜5肋骨は、胸壁にある起始部の位置を把握する目印です。

周辺の組織。 腕神経叢の神経束と腋窩の血管は、この筋肉の深層を通ります。肋骨の後ろには、胸膜と肋間の組織があります。

触診

患者さんの体位。 腕を支えた状態で仰向けになってもらいます。胸元は適切に覆い、診察の内容を説明して同意を得ます。

解剖学的な目印を確認する

  • 鎖骨の外側の下にある烏口突起を、やさしく探します。
  • 大胸筋の下にある、第3〜5肋骨の前面の領域を把握します。これらの肋骨の高さは体表の基準であり、小胸筋の筋腹に直接触れる場所ではありません。

診察の手順

  1. 局所に触れる前に、肩を観察し、動きを調べます。
  2. 上にある大胸筋ごしに、領域全体へやさしく触れます。小胸筋は深い位置にあることを記録に残します。
  3. 普段の痛みが出るかを尋ね、手先にピリピリ感が出たらすぐにやめます。

所見を記録する

  • 領域全体の圧痛は評価の参考になることもありますが、圧迫があると断定する根拠にはなりません。

限界と注意点

  • ご自身で深く触れたり、ボールで強く押したり、腕のしびれを誘発しようとしたりしないでください。
[1][2]

診察と検査

2

肩の自動運動と、支えた状態での他動運動の比較[3]

力を入れたときの痛みと、関節の動きそのものが大きく制限されている状態を区別します。

体位
自動での挙上は座位で行います。他動の検査は仰向けで、肩甲骨と腕を支えて行います。
手技
自動での挙上と外旋を記録したあと、同じ面で検者が補助しながらやさしく動かして比べます。普段の痛み、可動域、肩甲骨が早い段階から代わりに動いていないかを記録します。
陽性所見
自動では制限があっても他動ではより広く動く場合は、自動・他動ともに強く制限される場合とは異なります。
解釈
自動と他動の差が大きく、力も入りにくい場合は、腱板や神経の評価が必要です。他動でも全体に制限がある場合は、関節や関節包に由来する経路が考えられます。
限界
痛み、身構え、測定時の姿勢によって、動きは変わります。どちらのパターンでも、個々のトリガーポイントは特定できません。

手の運動機能と感覚の左右比較[2]

神経に重点を置いた評価の流れが必要な所見を見つけます。

体位
両腕を支えて力を抜いた座位で行います。
手技
軽い力で、指を広げる、母指と他の指を合わせる、握るという動作を比べ、続いて両手の軽い触覚を調べます。症状が出ている範囲を記録し、腫れや色の違いがないかも観察します。
陽性所見
一貫した筋力低下、感覚の低下、腫れ、色や温度の左右差があります。
解釈
客観的な機能低下があれば、神経や血管の評価が必要です。局所の圧痛だけでは、病変の位置は分かりません。
限界
これはスクリーニングの診察であり、小胸筋症候群に対して妥当性が確認された検査ではありません。所見が正常でも、断続的に出る症状を否定することはできません。

ほかの原因との鑑別

心臓や肺に由来する胸痛[5]

判断に役立つ所見。 新たに出た圧迫感、体を動かしたときの症状、息苦しさ、発汗、ふらつきなどです。

次の対応。 症状に応じて、至急または救急での評価を行います。

頸椎神経根症、または末梢神経の絞扼[2]

判断に役立つ所見。 首の動きで変わる症状、または正中神経・尺骨神経の分布に一致する感覚と運動の変化があります。

次の対応。 首と末梢神経を診察します。続く機能低下を明らかにするのに役立つ場合は、検査を行います。

神経性または血管性の胸郭出口症候群[2]

判断に役立つ所見。 腕を使うと症状が出て、ほかの原因を評価したうえで、経過と神経・血管の所見が合致します。

次の対応。 日常生活の支障が続く場合や、客観的な機能低下がある場合は、専門的な評価を受けます。

腱板や烏口突起周辺の肩の障害[3]

判断に役立つ所見。 主に肩を挙げるときや抵抗を加えたときに痛み、肩の局所の所見を伴います。

次の対応。 腕神経叢が圧迫されていると推測せず、肩の診察を最後まで行います。

治療の選択と進め方

セルフケアと活動

症状が出る腕の作業を調整する[2]

検討する場面。 肩や腕の症状について評価を受けており、急性の血管の異常を疑わせる所見がない場合です。

頭より上での作業は一度に行う時間を短くし、運ぶ荷物を軽くして、作業の合間に前腕を支えます。

実施量と見直し
症状が出る作業の最中にこの調整を試し、痛みと作業のしやすさにどう影響するかを確認してから、続けるかどうかを決めます。
段階的な進め方
症状がすぐに落ち着き、筋力が安定している場合にだけ、作業の時間を延ばします。
中止・再評価の目安
症状の悪化が続く場合は、負荷を減らします。新たな著しい筋力低下、しびれ、けがのときのような鋭い痛みが出たら、再評価が必要です。
根拠と限界
引用している資料は、解剖学的な位置の把握や、周辺領域への対応を支えるものです。ここで示す活動と開始量は臨床上の応用であり、小胸筋だけを対象とした有効性は、これらの資料では確立されていません。

運動とリハビリテーション

支えを使った肩甲骨の運動[1][4]

検討する場面。 肩の局所に不快感はあっても、動かすことに耐えられる場合です。

前腕をテーブルの上で滑らせ、元の位置に戻します。肩甲骨を下げて後ろに固定せず、自然に動くようにします。

実施量と見直し
開始例は、無理のない範囲で5〜8回を1セットとし、1日おきに行う方法です。症状の出やすさと翌日の反応に合わせて調整します。
段階的な進め方
楽に手が届く範囲を広げ、そのあとでより高い面へ移ります。
中止・再評価の目安
症状の悪化が続く場合は、負荷を減らします。新たな著しい筋力低下、しびれ、けがのときのような鋭い痛みが出たら、再評価が必要です。
根拠と限界
引用している資料は、解剖学的な位置の把握や、周辺領域への対応を支えるものです。ここで示す活動と開始量は臨床上の応用であり、小胸筋だけを対象とした有効性は、これらの資料では確立されていません。

臨床の専門家によるケア

評価された胸郭出口の症状に対する、個別化したリハビリテーション[2]

検討する場面。 首、肩、末梢神経の評価を終えたあとも、腕を使うときの症状が続く場合です。

所見に基づいて、段階的に腕を伸ばす練習、肩甲骨まわりの筋肉への負荷、作業の調整を選びます。診断のための精査として、専門医が局所麻酔薬による筋肉のブロックを検討する場合もありますが、その反応だけで診断が確定するわけではありません。

実施量と見直し
症状が出る作業の最中にこの調整を試し、痛みと作業のしやすさにどう影響するかを確認してから、続けるかどうかを決めます。
段階的な進め方
腕を使う動作への耐性と、運動・感覚の所見を再確認します。客観的な筋力低下があれば、紹介の時期を見直します。
中止・再評価の目安
症状の悪化が続く場合は、負荷を減らします。新たな著しい筋力低下、しびれ、けがのときのような鋭い痛みが出たら、再評価が必要です。
根拠と限界
INTOSは専門家の合意文書で、評価を受けた神経性胸郭出口症候群(NTOS)の多くについて、保存的な治療を支持しています。小胸筋の圧痛に対して、注射やボツリヌス毒素を定型的なコースで用いる根拠を示すものではありません。

臨床の専門家によるケア

小胸筋症候群に対する、専門医によるボツリヌス毒素という選択肢[6]

検討する場面。 小胸筋症候群と診断され、リハビリテーションを行っても、腕を使うときの制限が続く場合です。

リハビリテーションを続けながら、専門医が超音波ガイド下でのボツリヌス毒素注射を検討する場合があります。機能面での目標を話し合い、一時的に力が入りにくくなる可能性についても確認します。

実施量と見直し
製剤、量、時期は専門医が選ぶ必要があります。圧痛のある点があるからといって、定型的な連続治療を想定しないでください。
段階的な進め方
さらに処置を検討する前に、同じ腕を使う作業で再評価します。
中止・再評価の目安
新たな力の入りにくさや、広がる症状が出たら、再評価が必要です。
根拠と限界
小規模で対照のない前向きの症例集積が、リハビリテーション後の、選ばれた症候群の集団を対象に行われました。小胸筋だけのトリガーポイントに対して、定型的な有効性が確立されたわけではありません。

再評価と経過観察

  • 同じ腕の作業で、楽に手が届く高さと、運べる荷物の重さを比べます。
  • 一定の軽い頭上作業で、症状が出始めるまでの時間と、腕を下ろしてから症状が落ち着くまでの早さを記録します。
  • 手の筋力、感覚、症状の分布を再確認します。局所の圧痛が軽くなっていても、運動や血管に関する所見が変化している場合は、再評価が必要です。

根拠と出典

  1. University of Washington Muscle Atlas: Pectoralis Minor

    2026 · 大学の解剖学参考資料

    2026年9月に閲覧。年は閲覧年です。付着部と作用の確認に用いており、治療効果やポイントマップの妥当性の裏づけには用いていません。

  2. Chim et al. Consensus Recommendations for Neurogenic Thoracic Outlet Syndrome from the INTOS Workgroup

    2024 · 専門家による合意

    臨床症候群と鑑別の評価を扱っています。誘発して出る所見や局所の圧痛は、それだけでは診断の決め手になりません。注射の使い方は、専門家によって異なります。

  3. Desmeules et al. Rotator Cuff Tendinopathy Diagnosis, Nonsurgical Medical Care, and Rehabilitation

    2025 · 診療ガイドライン

    対象は、部分断裂を含む成人の腱板腱障害で、全層断裂は含みません。積極的なリハビリテーションを推奨し、衝撃波治療の適応を、石灰沈着性と非石灰沈着性で分けています。

  4. AAOS OrthoInfo: Scapular (Shoulder Blade) Disorders

    2026 · 専門学会による臨床指針

    年は閲覧年です。肩甲骨の動きや、神経に関連した翼状肩甲の診察を裏づけています。ここに示した運動の例は、実用上の応用です。

  5. NHS: Chest pain

    2026 · 国の医療サービスによる指針

    年は閲覧年です。新たに出た胸痛や繰り返す胸痛には、適切な医学的評価が必要です。圧痛があるからといって、緊急性を示す特徴が除外されるわけではありません。

  6. Howard et al. Pectoralis minor syndrome: diagnosis with Botulinum injection and treatment with tenotomy – a prospective case series

    2022 · 前向き症例集積

    選ばれた難治性の小胸筋症候群が対象です。対照のない根拠であり、専門医による選択肢にとどまります。

関連するトリガーポイント

  • 大胸筋
  • 斜角筋
  • 上部僧帽筋
  • 烏口腕筋
  • 大胸筋 TrP1
  • 小胸筋 TrP1
  • 小胸筋 TrP2
  • 前鋸筋 TrP1
  • 肋間筋(第5-6)TrP1