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Atlas · 前腕

短橈側手根伸筋

短橈側手根伸筋(ECRB)は、手首を反らす動きを助け、物を握るときに手首を安定させる筋肉です。持ち上げる動作で肘の外側が痛む場合、総伸筋腱が関わっていることがよくあります。診察では、肘に近い腱の痛み、筋腹の圧痛、手首の甲側の症状を分けて調べます。

短橈側手根伸筋
身体部位
前腕
トリガーポイント
1
この筋に記載
よくある症状
3
記録されたパターン
よくある原因
3
関連する因子

筋肉の概要

症状と最初の対処

最初にできる対処

  • 物を持ち上げるときは、手首を楽な中間位に保ち、力を込めて握る動作はしばらく控えめにしてください。
  • パソコン作業では、前腕を支えてください。
  • 腱を繰り返し押すのではなく、手首を反らす筋肉への負荷を段階的に増やしていきます。

評価を受ける目安

  • 指や手首を伸ばす力が新たに弱くなった場合、しびれが続く場合、物を落とす場合は、診察を受けてください。
  • けがの後に肘が腫れた場合、肘が引っかかって動かなくなる場合、動かせる範囲が次第に狭くなる場合は、評価を受ける必要があります。

ECRBは第3中手骨の底に達します。治療を選ぶ前に、痛みが総伸筋の起始部、前腕の筋肉の領域、手首のどこにあるのかを絞り込みます。

診察・触診・治療の根拠

筋肉と痛みの図解

Extensor Carpi Radialis Brevis · Regional source example

Right extensor carpi radialis brevis: the surface example and referral pattern from panel B. This panel does not expose the muscle. Travell and Simons, Fig. 34.1B-surface, p. 692. Regional illustration; not an individual map of a selected numbered point.

画像内の表記は英語です。

元のサイズで画像を開く

トリガーポイント

1. 短橈側手根伸筋

位置。 前腕背側の橈側寄りにある筋肉の領域で、上腕骨外側上顆にある総伸筋腱とは区別されます。

トリガーポイントの分布図
短橈側手根伸筋 — Extensor carpi radialis brevis and extensor carpi ulnaris · Trigger-point examples 1元のサイズで画像を開く

筋肉の領域を示す参考図です。選択した番号のトリガーポイントだけを示す図ではありません。

関連痛の分布図
短橈側手根伸筋 — Extensor Carpi Radialis Brevis · Regional source example元のサイズで画像を開く

筋肉の領域を示す参考図です。選択した番号のトリガーポイントだけを示す図ではありません。

関連痛。 肘の外側、前腕背側の親指側寄り、手首の甲側

関連痛のパターン

  • 肘の外側
  • 前腕背側の親指側寄り
  • 手首の甲側の症状を伴うことがあります

この痛みが、どのように感じられるか

物を握る、カップを持ち上げる、手首を反らしたまま保つといった動作で、肘の外側や前腕に痛みが出ることがあります。総伸筋腱、筋腹、手首の局所をそれぞれ調べ、痛みを誘発する動作の最中の所見とも見比べます。

患者さんからよく伺うお話

  • 握るときに肘の外側が痛む
  • 物を持ち上げると前腕が疲れる
  • 手を使うと手首の甲側がうずく

症状が悪化しやすい状況

  • 握る動作
  • 手首を反らしたまま持ち上げる動作
  • マウスや工具を長く使い続けること
関連する運動を見る (3)

患者が訴える症状

握る、持ち上げる動作で痛む 経過を追うときは、同じ物と同じ手首の位置で比べます。

肘の外側を押すと痛む 痛みの中心が腱の起始部にあるのか、そこから前腕側へ離れた位置にあるのかを見極めます。

手首の甲側の不快感 離れた部位からの関連痛と決めつけず、手首そのものを調べます。

よくある原因

握る動作の負荷が増えたこと 工具の使用、ラケットを使う競技、物を運ぶ作業が、今の体が耐えられる負荷を超えている場合があります。

手首を反らした姿勢が続くこと 作業の調整として、手首を中間位で支える方法を試すことができます。

総伸筋腱の腱障害 腱に負荷がかかったときの痛みと、周囲の筋肉の過敏さが併存することがあります。

臨床家と指導下の学習者向け

臨床資料

肘の外側や手首の甲側の痛みは、ほかの伸筋、関節の病気、橈骨神経の問題と症状が重なります。

解剖と触診

解剖学的な位置関係

ECRBは、総伸筋の共通起始部を介して上腕骨外側上顆から起こり、その腱は第3中手骨底の背側に付きます。手首を反らし、親指側へ傾ける働きがあります。[1]

  • 上腕骨外側上顆は、肘に近い腱の領域を示す目印です。
  • 前腕背側の橈側寄りは、橈側の手首の伸筋群と指を伸ばす筋群の間に位置します。
  • 第3中手骨底は、腱が遠位で付く部位の目印です。

周辺の組織。 肘に近い部分では長橈側手根伸筋(ECRL)が重なり、より深い層に回外筋と橈骨神経深枝があります。手首や指を伸ばす腱は、手首の背側でいくつかの区画を通ります。

触診

患者さんの体位。 座位で肘と前腕を支え、手のひらを下に向けます。手は台の端から出して力を抜きます。

解剖学的な目印を確認する

  • 上腕骨外側上顆と、そのすぐ近くにある総伸筋腱の起始部を探します。
  • 腱より遠位にある、前腕背側近位の伸筋群の位置を把握します。橈骨頭の周辺とは区別してください。

診察の手順

  1. 指の力を抜いたまま手首を軽く反らしてもらい、伸筋群の位置を確認します。
  2. いったん力を抜いてもらい、腱の起始部と筋腹に別々に軽く触れて、反応を比べます。
  3. 普段感じている痛みが出るかを記録し、軽く握る動作を再度確認します。痛みが遠位にある場合は、手首も調べます。

所見を記録する

  • 腱に負荷がかかったときに出る限局した痛みは、広い範囲に及ぶ筋肉の過敏さや、近位橈側の深い痛みとは異なります。

限界と注意点

  • 近位の橈骨神経管に向けて強く押し込んだり、しびれを誘発したりしないようにしてください。
[1][2][4]

診察と検査

2

痛みのない範囲での握力測定[2]

痛みを最大限まで誘発することなく、握る動作にどこまで耐えられるかを測ります。

体位
座位で肘を伸ばし、前腕は手のひらを下に向け、手首をわずかに反らします。この姿勢がつらい場合は、調整した姿勢を記録し、次回以降も同じ姿勢を用います。
手技
握力計を使い、握る力をゆっくり強めていき、普段の肘の痛みが出た時点で止めます。力、姿勢、痛む場所を記録します。反対側と比べ、耐えられる範囲で同じ条件を保って繰り返します。
陽性所見
痛みなく出せる力が低下している、または普段の肘外側の痛みが出ます。
解釈
肘外側痛のリハビリテーションや作業への耐性を考えるうえで、役に立つ基準になります。
限界
握る動作には多くの筋肉が関わり、痛みや力の入れ方にも左右されます。ECRBのトリガーポイントを示す基準値はありません。

段階的に抵抗を加える手関節伸展[2][1]

伸筋に負荷をかけたときの痛みを、握力測定の所見と比べます。

体位
手のひらを下にして前腕を支えます。初めは肘を曲げ、手首は中間位に近い位置にします。
手技
指の力を抜いたまま、手首をわずかに反らして保ってもらい、手の上から軽く下向きの抵抗を加えます。痛む場所と力を記録して左右を比べます。肘をより伸ばした姿勢は、耐えられる場合にだけ試します。
陽性所見
外側上顆の近くや伸筋の領域に普段の痛みが出る、または力が低下します。
解釈
腱の領域で普段の痛みと一致する痛みがあれば、外側肘腱障害としての評価を支持します。より深い痛みや運動機能の低下がある場合は、別の原因も考える必要があります。
限界
ECRL、尺側手根伸筋(ECU)、指を伸ばす筋群も関わります。痛みだけでは、腱と筋肉のどちらの組織かは区別できません。

ほかの原因との鑑別

外側肘腱障害[2]

判断に役立つ所見。 総伸筋の共通起始部で圧痛が最も強く、握ると痛み、抵抗に逆らって手首を反らしても痛みます。

次の対応。 腱への負荷を段階的に調整するリハビリテーションの流れと、機能を測る指標を用います。

橈骨神経管の痛み、または後骨間神経障害[4]

判断に役立つ所見。 痛みの中心が外側上顆よりさらに遠位にある、回外で痛む、診察で指を伸ばす力の低下が客観的に認められる、といった所見です。

次の対応。 橈骨神経が担う運動機能を診察します。筋力低下が続く場合は、専門的な精査が必要です。

肘関節または手関節の障害[2]

判断に役立つ所見。 腫れ、引っかかり、外傷、他動運動の制限があります。手首に負荷をかけると、手首に限局した痛みが出る場合もあります。

次の対応。 症状のある関節を診察し、必要に応じて画像検査を行います。

治療の選択と進め方

臨床の専門家によるケア

握ると痛む場合の、肘の運動併用モビライゼーション[2][5]

検討する場面。 外側肘腱障害と評価され、握る・持ち上げる動作で痛みがあり、徒手的な補助によって反応が測定できる場合です。

腕を支えた状態で、施術者が肘の外側方向へ無理のないグライドを加えながら、患者さんに軽く握る動作を行ってもらいます。方向と力を調整して動作が楽になる条件を探し、そのうえで補助なしで痛みのない握りを繰り返します。効果の見られた徒手療法は、手関節伸筋の運動と組み合わせます。

実施量と見直し
試験では、運動と自宅プログラムを含む30分の来院を、6週間で8回行いました。ここで述べている手技は臨床的な技法であり、反復回数は直後の反応を見て選びます。
段階的な進め方
痛みのない握力、PRTEE(Patient-Rated Tennis Elbow Evaluation)、持ち上げ動作の一つを追跡します。補助なしでの握りや負荷への耐性が改善するにつれて、補助を伴う施術を減らします。
中止・再評価の目安
痛み、ピリピリ感、力の入りにくさが強まるグライドは中止します。外傷、腫れ、引っかかり、神経症状の持続がある場合は、再評価が必要です。
根拠と限界
198人が参加した試験で、モビライゼーションに運動を加えた群は、6週時点で経過観察のみの群より早く改善しました。52週時点では、結果に差はありませんでした。肘周辺を対象とした一連のプログラムを支持する結果ですが、各要素がどれだけ寄与したかは明らかではありません。

セルフケアと活動

痛みを誘発する作業で、握る負担を減らす[2]

検討する場面。 運動機能が保たれていて、作業に伴って肘の外側が痛む場合です。

荷物は体に近づけて持ち、重い物は両手で持ちます。握りやすい柄の太さや、電動工具を試してください。パソコン作業では前腕を支え、手首を反らした姿勢が続かないようにします。

実施量と見直し
作業の調整は一つずつ、数回の作業時間にわたって試します。
段階的な進め方
痛みなく握れる力や、その日の後半の楽さが改善してきたら、負荷や作業時間を増やします。
中止・再評価の目安
筋力低下が進む場合や、感覚の変化が続く場合は、再評価が必要です。
根拠と限界
肘外側痛のリハビリテーションに沿った、実用的な負荷の調整です。すべての方に当てはまる柄の太さはありません。

運動とリハビリテーション

手首を反らす筋肉への抵抗運動を段階的に進める[2]

検討する場面。 外側肘腱障害と評価された場合、または伸筋の痛みが耐えられる範囲にある場合です。

手のひらを下にして前腕を台に置き、手首を台の端から出します。まず、手首を軽く反らしたまま保つ静的な運動から始めます。次に、軽い重りを、楽に動かせる範囲でゆっくり持ち上げ、ゆっくり下ろします。

実施量と見直し
開始例は、6〜8回を1セットとして1日おきに行う方法です。動かすと症状が出やすい場合は、楽に保てる短い静止を数回行う方法もあります。
段階的な進め方
回数を増やし、そのあとで抵抗を強めます。次の段階に進む前に、握る動作と翌日の反応を確認してください。
中止・再評価の目安
症状の悪化が続く場合は、運動量を減らします。手首を反らす力が新たに失われることは、トレーニングで想定される反応ではありません。
根拠と限界
肘外側痛のガイドラインは、手関節伸筋への抵抗を段階的に増やす運動を支持しています。この開始量は実用上の調整例であり、特定の試験で確立された、ECRBのポイントの治療法ではありません。

臨床の専門家によるケア

外側肘腱障害が続く場合のドライニードリング[3][2]

検討する場面。 外側肘腱障害と評価され、適切な負荷調整を行っても、握ると痛む状態が続く場合です。

施術者が行う腱または筋肉へのドライニードリングについて、標的を明確にしたうえで相談します。ECRBの筋腹の圧痛に対する施術と、総伸筋腱に対する施術は、同じものではありません。

実施量と見直し
期間を限った施術の流れと、早い時期の機能の再評価を取り決めます。針の本数や深さに標準があるという意味ではありません。
段階的な進め方
最初の施術期間が終わったら、痛みのない握力と持ち上げ動作を再確認し、繰り返す前には、より長期の機能も確認します。
中止・再評価の目安
新たな神経症状や耐えがたい痛みが出たら中止します。開始前に、局所の感染、出血、解剖学的なリスクを確認してください。
根拠と限界
ある試験では、108人をドライニードリング群とコルチコステロイド群に無作為に割り付け、101人を解析しました。6か月までの追跡で、PRTEEの改善はドライニードリング群のほうが大きくなりました。偽施術との比較がないため、ニードリング固有の効果を切り分けることはできず、ECRBの筋肉のポイントを治療できたことの証明にもなりません。

再評価と経過観察

  • 同じ姿勢で、痛みのない握力と、抵抗に逆らう手関節の伸展を再確認します。
  • 実際の持ち上げ作業や工具を使う作業を、翌日の反応も含めて追います。
  • 予定した再評価の時期には、PRTEE(Patient-Rated Tennis Elbow Evaluation)を繰り返し、肘に関する痛みと作業上の支障を、測定した握力と合わせて比べます。

根拠と出典

  1. University of Washington Muscle Atlas: Extensor Carpi Radialis Brevis

    2026 · 大学の解剖学参考資料

    2026年9月に閲覧。年は閲覧年です。筋の付着部と働きを裏づける資料であり、トリガーポイントの診断や運動の有効性を示すものではありません。

  2. Lucado et al. Lateral Elbow Pain and Muscle Function Impairments

    2022 · 診療ガイドライン

    外側肘腱障害の評価、手関節伸筋への段階的な負荷、ドライニードリングを扱っています。ここで扱う診断と腱という標的は、ECRBの筋肉単独の圧痛点とは別のものです。

  3. Uygur et al. The use of dry needling vs. corticosteroid injection to treat lateral epicondylitis

    2021 · 実薬・実治療対照無作為化試験

    108人を無作為に割り付け、101人を解析。6か月までの追跡で、PRTEEの改善はコルチコステロイドよりドライニードリングのほうが大きくなりました。偽施術との比較はなく、ECRBの筋肉単独の診断も行われていません。

  4. Radial Tunnel Syndrome

    2023 · 臨床の参考資料

    前腕の近位橈側の痛みと、運動麻痺を伴う後骨間神経障害を区別する資料です。誘発テストのそれぞれは、単独では診断の決め手になりません。

  5. Bisset et al. Mobilisation with movement and exercise, corticosteroid injection, or wait and see for tennis elbow

    2006 · 無作為化臨床試験

    198人が参加。6週間で、30分の理学療法の来院を8回行い、肘のモビライゼーションと運動を組み合わせました。6週時点では経過観察より早く改善しましたが、52週時点では差がありませんでした。組み合わせたプログラムでは、モビライゼーション単独の効果は切り分けられません。

関連するトリガーポイント

  • Extensor carpi radialis longus
  • Supinator