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Atlas · 頸部

頸板状筋

頸板状筋は、胸椎上部と上位頸椎の横突起をつなぎます。ほかの後頸部筋とともに、首を反らす動きや振り向く動きに働きます。振り向く動作や作業を続ける際に、首と背中上部がどのように関わるかを評価します。

頸板状筋
身体部位
頸部 · 上背部
トリガーポイント
3
この筋に記載
よくある症状
3
記録されたパターン
よくある原因
3
関連する因子

筋肉の概要

症状と最初の対処

最初にできる対処

  • できる範囲で主な作業対象に正面を向け、腕を支えてください。
  • 楽な範囲で首を回す動きと、普段どおり歩く時間を交互に取り入れます。
  • 症状が強まっている間は、繰り返し上を見る作業を短くします。

評価を受ける目安

  • 突然生じたいつもと違う激しい頭痛、新たに物が二重に見える・見えなくなる症状、バランスの崩れ、筋力低下、話し方や飲み込みの変化があれば、至急受診してください。
  • 大きな外傷を受けた後、新たに頭痛が現れたとき、頭痛が徐々に変化しているときは、診察を受けてください。

頸板状筋は第1〜第3頸椎に付き、頭蓋骨には付きません。上方の付着部は深くにあります。首の側面で硬いしこりを探して近づこうとしないでください。

診察・触診・治療の根拠

筋肉と痛みの図解

頸板状筋

青色は対象の筋肉を示します。×印は代表的なトリガーポイントの位置、陰影は関連痛が現れる可能性のある範囲です。これらの例は、下に番号付きで示す各ポイントと一対一に対応するものではありません。痛みの広がりには個人差があり、この図だけで原因を診断することはできません。

画像内の表記は英語です。

筋肉と痛みの図解

Splenius Cervicis · Anatomy 1

Anatomical view of the illustrated muscle.

画像内の表記は英語です。

元のサイズで画像を開く

トリガーポイント

1. TrP1

位置。 頸部後方、下部頸椎

トリガーポイントの分布図
頸板状筋 — Splenius Cervicis · Trigger-point examples 1元のサイズで画像を開く

筋肉の領域を示す参考図です。選択した番号のトリガーポイントだけを示す図ではありません。

関連痛の分布図
頸板状筋 — Splenius Cervicis · Referred-pain pattern 1元のサイズで画像を開く

筋肉の領域を示す参考図です。選択した番号のトリガーポイントだけを示す図ではありません。

関連痛。 首の後ろと背中上部

関連痛のパターン

  • 首の後ろ
  • 胸椎上部周辺

この痛みが、どのように感じられるか

体の横や後ろを見ると、首から背中上部にかけてのうずきが目立つ場合があります。体幹を支えた状態でも動きを比べ、併発する頭痛は別に評価します。

患者さんからよく伺うお話

  • 首と背中上部がうずく
  • 楽に振り向きにくい

症状が悪化しやすい状況

  • 横を向いたまま過ごす
  • 長時間の座り作業
関連する運動を見る (1)

患者が訴える症状

首から背中上部にかけてのうずき 動かすとどこが痛み始めるか、体幹を支えると痛みが変わるかを記録します。

回旋が制限される 運転中や会話中、振り向く際に不快感が出る場合があります。

首を反らす力を出すと痛む 頸部伸筋は複数働いています。痛みから、特定の筋肉だけが弱いとは判断できません。

よくある原因

繰り返し首を反らす作業 仕事やスポーツで上を見る負荷が、現在耐えられる量を超える場合があります。

横を向いたまま座り続ける 動きに変化が少ない作業では、不快感が積み重なる場合があります。

最近のけがや活動の変化 経過を確認し、頸部周辺に加わった負担による損傷か、ほかに調べるべき問題があるかを判断します。

臨床家と指導下の学習者向け

臨床資料

背中上部や首に出る症状は、複数の筋肉や関節で重なります。痛む範囲や圧痛点だけで、頭痛の原因は確定できません。

解剖と触診

解剖学的な位置関係

頸板状筋は第3〜第6胸椎の棘突起から起こり、第1〜第3頸椎の横突起に付きます。頸部の伸展と、同じ側への回旋・側屈を助けます。[1]

  • 起始部を大まかに見当づける際は、胸椎上部の棘突起周辺を目印にします。
  • 上位頸椎横突起への付着部は、深い位置にあります。

周辺の組織。 下方では僧帽筋や菱形筋が重なります。頸部での走行は、頭板状筋、肩甲挙筋、さらに深い伸筋群に囲まれています。

触診

患者さんの体位。 額と腕を支えてうつ伏せになります。腹臥位がつらい場合は、支えを使った座位にします。

解剖学的な目印を確認する

  • 胸椎上部の正中から、首の後外側へ向かう位置関係を確認します。
  • 肩甲骨の縁にある圧痛と、頸部伸筋領域を区別します。

診察の手順

  1. 患者さんに首をわずかに反らす力を出してもらい、後面に広がる筋層を見当づけます。
  2. 頭の力を抜いてもらい、診察者は首の下部から上部へ、周辺に軽く触れます。
  3. 圧痛を、患者さん自身が首を回す・反らす際の所見と比べます。特定の筋層について判断しきれない点も記録します。

所見を記録する

  • いつもの痛みや局所の敏感さは、周辺筋が症状に関わる手がかりになる場合があります。
  • 体表からの触診で、深い位置にある第1〜第3頸椎への付着部は確認できません。

限界と注意点

  • 首の側面を強く押したり、頸椎横突起の間を探って触れようとしたりしないでください。
[1][2]

診察と検査

2

繰り返し比べられる課題での自動頸部回旋[2]

ミラーを確認する、体の横を見るために必要な可動域を測ります。

体位
体幹を支えて座り、顔を正面へ向けます。
手技
患者さんに、体幹を回さず頭だけをゆっくり左右へ向けてもらいます。角度、いつもの痛みが生じる場所、痛み始める時点を記録します。同じ開始位置に戻り、必要な課題を楽な速さで繰り返します。
陽性所見
片側で一貫して痛みが出る、または回旋が少ないという所見です。トリガーポイント陽性とせず、実際に確認したことを記録します。
解釈
局所痛をもとに運動量を調整します。腕へ放散する症状があれば、神経学的な評価を行う必要があります。
限界
回旋ではいくつもの筋肉と関節が働きます。この検査だけで、板状筋を唯一の原因と特定することはできません。

頸部伸展に軽い抵抗を加える比較[1][2]

動く際の痛みと、筋力を発揮する負荷に耐えられるかを比較します。

体位
体幹を支えた座位で頭を中央に保ち、肩の力を抜きます。
手技
患者さんは頭を動かさず、首を反らす力を出します。診察者は伸展に逆らう抵抗を軽く加え、徐々に増やします。左右を比べ、痛む場所と力を維持できるかを記録します。可動域の端に頭を置くことは避けます。
陽性所見
普段から感じる後頸部の不快感、または繰り返し認める左右の負荷耐性差を記録します。
解釈
力を出すと痛む場合、負荷に反応する頸部症状を考える手がかりになります。明らかな筋力低下や遠位部に症状があれば、評価を見直します。
限界
これは臨床で機能を比較する方法です。どちらの板状筋についても、単独で調べる検査として妥当性が確かめられたものではありません。

ほかの原因との鑑別

片頭痛または緊張型頭痛[4][2]

判断に役立つ所見。 光や音に敏感になる、吐き気がする、活動で悪化する、両側が圧迫されるといった特徴を伴う頭痛が繰り返され、首に圧痛もある場合があります。

次の対応。 頭痛の経過を聞き取り、日記も活用します。繰り返す頭痛や生活に支障を来す頭痛は、医療機関で評価を受けます。

上位頸椎関節に関連する痛み[3]

判断に役立つ所見。 首を動かした際にいつもの頭痛が繰り返し再現され、上位頸椎の動きが制限されています。

次の対応。 頭痛と頸部を一緒に評価します。触診だけでは、関節からの痛みか筋肉からの痛みかを区別できません。

前庭・視覚・血管の障害[4]

判断に役立つ所見。 新たな回転性めまい、複視、視力喪失、バランスの崩れ、発語の変化、突然生じたいつもと違う頭頸部痛は、筋肉が原因とする根拠にはなりません。

次の対応。 急性の神経症状や視覚症状は至急評価します。それ以外でも症状が続く場合は、適切な前庭機能や眼の評価につなげます。

治療の選択と進め方

運動とリハビリテーション

制限されている動作を楽に練習する[2]

検討する場面。 評価を受けた、動作に関連する頸部痛が対象です。

体幹を支え、頭を中央に保ちます。少し上を見てから、頭を水平へ戻す練習をします。振り向く動きは、楽な範囲に限って穏やかに加えます。

実施量と見直し
始め方の例は、1日1回、ゆっくり3〜5回です。症状が出やすいときは、動かす幅を狭くします。
段階的な進め方
楽に動かせる幅を広げた後、高い棚を確認する、体の横を見る動作を練習します。当日後半と翌朝にどう感じるかで、次の運動量を決めます。
中止・再評価の目安
新たに強い頭痛、視覚異常、めまい、腕の症状が出たときや、練習後も悪化が続くときは中止します。
根拠と限界
頸部全体に関する指針は、能動的なリハビリを支持しています。ここで示す練習は臨床に合わせた例であり、頸板状筋だけに対する有効性を示すものではありません。

セルフケアと活動

同じ頭位を続ける作業の調整[2]

検討する場面。 読書、運転、頭より高い位置での作業中に、症状が積み重なる方が対象です。

対象物を見やすい位置に置き、前腕を支えます。作業と、短く楽に動く時間を交互に設けます。枕は、決まった頸部カーブに合わせるより、朝に楽に感じる高さを選びます。

実施量と見直し
普段行う作業で、現実的な工夫を一つ選び、数日間試してください。
段階的な進め方
楽に続けられる時間を徐々に延ばします。動作に役立つ工夫は残します。
中止・再評価の目安
悪化が続く、頭痛に新しい特徴が現れる、大きな外傷後に症状がある場合は、再評価が必要です。
根拠と限界
頸部全体を扱うケアの助言を、作業へ応用するものです。読書や振り向く際の楽さと朝の症状から、有用かどうかを判断します。

臨床の専門家によるケア

診療者による徒手ケアの短期試行[2]

検討する場面。 局所的な圧痛やこわばりで、能動的なリハビリ計画が進めにくい方が対象です。

頸部と頭痛を評価してから、患者さんが耐えられる強さで、診療者が軟部組織に触れるか、モビライゼーションを行います。その直後、患者さんに制限されていた動作をもう一度行ってもらいます。

実施量と見直し
短い試行期間を相談して決めます。追加の施術を予約する前に、反応を評価します。
段階的な進め方
受診と受診の間にも、症状が和らいだことで読書、振り向く動作、運動が楽になる場合に継続します。
中止・再評価の目安
新たな視覚・平衡・神経症状が出たら中止し、原因を調べます。役立っていないのに、圧を強めることは避けます。
根拠と限界
頸部の指針は、頸部周辺の症状に応じて対象を選び、徒手ケアと運動を組み合わせることを支持しています。痛みや活動の変化を追います。この推奨から、板状筋や後頭下筋のみを治療した効果は判断できません。

再評価と経過観察

  • 同じ支えと同じ軽い抵抗で、首を反らす力と回旋を再度確認します。
  • 圧痛点を繰り返し探すより、作業時間と翌日の反応を追います。
  • 睡眠が中断される状況と、目覚めた後、こわばりで楽に振り向けない時間がどのくらい続くかを記録します。

根拠と出典

  1. University of Utah: Deep Back and Suboccipital Region

    2014 · 大学の解剖学教育資料

    付着部と筋層の資料です。特に、頭板状筋が頭蓋骨に、頸板状筋が頸椎に停止する違いを確認します。

  2. Blanpied et al. Neck Pain: Revision 2017

    2017 · 診療ガイドライン

    頸部周辺を評価し、複数の能動的ケアを組み合わせる指針です。家庭で行う練習は個別に選ぶ開始例であり、試験で用いた処方ではありません。

  3. Hall et al. Comparative analysis and diagnostic accuracy of the cervical flexion-rotation test

    2010 · 診断法の比較研究

    頭痛を伴うさまざまな症状で、上位頸椎の動きを調べた研究です。後頭下筋を一つずつ分離するものではありません。トリガーポイントのマップを検証した研究でもありません。

  4. Seemungal et al. The Bárány Society position on Cervical Dizziness

    2022 · 学会の見解表明

    頸部から回転性めまいを生じる仕組みは確立していません。前庭や神経に関わる別の原因を評価する必要があります。

関連するトリガーポイント

  • Splenius capitis
  • Upper trapezius
  • Semispinalis capitis
  • Trapezius (upper fibers)
  • Levator scapulae
  • 頭板状筋 TrP1
  • 肩甲挙筋 TrP1
  • 頭半棘筋 TrP2
  • 頸部多裂筋
  • 頸板状筋 TrP1