緊張型頭痛を理解する

緊張型頭痛

緊張型頭痛

概要図

緊張型頭痛は、頻度の高い頭痛のパターンの一つとして知られています。脈打つような痛みというよりも、締めつけ・圧迫感・帯状に感じられることが多く、典型的な片頭痛発作よりも軽度であることが少なくありません。

実臨床では、緊張型頭痛の患者さんに、頸部や頭蓋周囲の筋を介する筋膜性の要素が関与していると考えられる場合があります。だからといって「筋肉だけが原因」という意味ではなく、筋系が臨床的に関与することがある、ということを示しています。

こうした背景があるため、姿勢・食いしばり・ストレス・睡眠の質・長時間の頸部負荷が、頭痛の頻度と強度に影響を与えやすい理由が理解できるでしょう。

実用的なモデルは「ストレス頭痛か、筋肉の頭痛か」という二者択一ではなく、ストレス・神経系の状態・特定のトリガーポイントが互いに作用し合うという見方です。

緊張型頭痛の多くは、頸部や顎の筋に加え、神経系の状態や生活背景が重なり合う、層をなしたパターンとして捉えるとよいでしょう。

解剖とトリガーポイント

頸部や頭蓋周囲のいくつかの筋は、頭部に関連痛を放散することがあると報告されています。これらが重なり合うことが、緊張型頭痛が広くびまん性に感じられ、日によって変動する理由の一つと考えられます。

緊張型頭痛

緊張型頭痛

僧帽筋上部
肩を持ち上げ、頸部を側屈させる筋肉

僧帽筋上部のトリガーポイントは、頸部の後外側からこめかみ方向、ときに眼窩後方へと関連痛を放散することがあると報告されています。緊張型頭痛と関連が指摘されている関連痛パターンの一つとされています。

胸鎖乳突筋(SCM)
頸部の回旋・屈曲を担う筋肉

胸鎖乳突筋のトリガーポイントは、前頭部の頭痛、眉の上のあたり、顔面・耳の症状、ときにめまい様の訴えに関与することがあると議論されています。これらは片頭痛・前庭症状・顎に関連する痛みと重なって現れる場合があり、鑑別を慎重に行う必要があります。

後頭下筋群
頭部と頸椎の間の細やかな運動制御を担う筋群

後頭部から頭部前方や眼の周囲へと回り込むような痛みに関与することがあると考えられています。姿勢に関連する頭痛や、頸性頭痛のパターンで取り上げられることが多い筋群です。

側頭筋
下顎を持ち上げる、咬合を担う筋肉

側頭筋のトリガーポイントは、こめかみの痛み、眉上部の痛み、ときに上顎歯への関連痛に関与することがあるとされています。ブラキシズムやストレス関連の食いしばりと併存することが少なくありません。

咬筋
下顎を持ち上げる主要な咀嚼筋

咬筋のトリガーポイントは、下顎・こめかみ・耳のあたりへと関連痛を生じ、顎の重さや開口の制限感をもたらすことがあると報告されています。食いしばりが関与する頭痛パターンと重なることがあります。

頭板状筋
頭部の伸展と回旋を担う筋肉

頭頂部や後頭上部に痛みを放散することがあり、帽子状の圧迫感として感じられる場合があります。

頭半棘筋
深層後頸部の伸筋

帯状に頭部を取り巻くようなパターンに関与することがあり、両側性の慢性緊張型頭痛の患者さんで筋膜性の関与因子として議論されることがあります。

肩甲挙筋
肩甲骨を挙上し、頸部を側屈させる筋肉

頸部のこわばり、頸の付け根の角の痛み、頭痛パターンに連動し得る上位頸部の張りに関与することがあるとされています。

関連痛パターン

各筋には固有の関連痛パターンがあるとされていますが、実際には複数の筋が同時に活動していることが多く見られます。同じ発作の中で「頭全体」「眼の奥」「こめかみ」「首から始まった」と表現される理由の一つです。

僧帽筋上部

後外側頸部からこめかみ、ときに眼窩後方へ

胸鎖乳突筋

前頭部、眉上部、耳の症状、顔面への関連痛が重なって現れることがある

後頭下筋群

後頭部から頭部前方や眼の周囲へと回り込む痛み

側頭筋

こめかみの痛み、眉上部、上顎歯への関連痛

咬筋

下顎・こめかみ・耳・側顔面への関連痛

緊張型頭痛と片頭痛の鑑別

緊張型頭痛片頭痛

痛みの性質

締めつけ・圧迫感・帯状に感じられることが多い
拍動性・脈打つような痛みが多い

部位

両側性、または広い範囲に分布することが多い
片側性のことが多いが、両側性のこともある

強度

軽度から中等度のことが多い
中等度から高度のことが多い

悪心・嘔吐

通常は伴わない、または軽度
伴うことが多く、しばしば顕著

光・音への過敏

通常は軽度、または認められない
顕著であることが多い

トリガーポイント

よく見られ、臨床的に関与することが多いとされる
認められることもあるが、片頭痛のすべてを説明する所見ではない

持続時間

30分から数日に及ぶことが多い
未治療では4〜72時間続くことが多い

セルフチェック

これらの評価手技は、頸部・顎・姿勢に関する関与因子を見極める手がかりとなります。最終診断を一人で下すためのものではなく、パターンを把握し受診の判断につなげるための道具と捉えてください。なお、突然の激しい頭痛、神経症状を伴う頭痛、発熱と項部硬直を伴う頭痛などはセルフチェックの対象ではなく、すぐに119番(救急車)または救急医療機関にご相談ください。

頸部筋群の触診

僧帽筋上部・胸鎖乳突筋・後頭下筋群・頭板状筋・頭半棘筋など、関与が疑われる筋を触診し、索状硬結(タイトバンド)や痛みの再現を確認します。重要な所見は「単に圧痛があるか」ではなく、患者さんがふだん感じている頭痛や関与する痛みのパターンが圧迫によって再現されるかどうかです。なお、触診所見には術者間のばらつきがあると報告されており、診断の手がかりの一つとして総合的に判断することが望まれます。

日中の食いしばりの確認

日中の何度かのタイミングで、上下の歯が触れ合っているか、顎が力んでいないかを確かめます。起床時の頭痛に顎の張りやこめかみの圧痛が重なる場合は、食いしばりやブラキシズムが関与している可能性が示唆されます。

頭部前方位の確認

体幹に対して頭が前方へ突き出していないかを確認します。頭部前方位が頭痛の唯一の原因となるわけではありませんが、頸部や後頭下筋群への過負荷を長引かせる背景因子として議論されることが多い所見です。姿勢と頭痛の関係は個人差が大きいため、姿勢だけを単独の説明としないようご注意ください。

頭痛日誌によるパターン把握

数週間にわたって頭痛日誌をつけ、部位・性質・強度・持続時間・随伴症状・誘因・治療への反応を記録します。記憶に頼るよりも、混合型の頭痛パターンを見極めやすくなります。

治療の選択肢

実用的な治療計画では、局所の筋に対する取り組みと、頭痛の再発を支えている広い背景因子への取り組みの両方を、併せて進めると効果が得られやすいと考えられています。なお、人によって頭痛の感じ方や治療への反応は大きく異なりますので、ご自身に合うやり方を医療者と一緒に見つけていく形が現実的です。

治療経路

治療経路

メカニズム図

セルフケア

  • 症状を再現する僧帽筋上部・SCM・後頭下筋群・顎の筋への、無理のないセルフリリース
  • 強い力で押すよりも、やさしい頸部の可動性運動とストレッチを優先する
  • 食いしばりが関与しているときは「口唇は閉じ、歯は離す」を意識する
  • 姿勢が明らかな背景因子であれば、デスク環境・モニター高さ・座り方を見直す
  • 緊張や睡眠の質と症状が結びついているときは、ストレス緩和の取り組みを併用する

徒手療法

  • 頸部および頭蓋周囲の筋への筋膜リリース
  • 耐えられる範囲での僧帽筋上部・肩甲挙筋への等尺性収縮後弛緩法
  • 明らかな適応がある場合に限り、訓練を受けた臨床家による口腔内アプローチ
  • 可動性や姿勢が主要な関与因子であるときの、頸椎・胸椎の徒手手技
  • 圧痛だけに頼らず、治療後の頭痛の反応を再評価する

介入的治療

  • 明らかな適応のある頸部・頭蓋トリガーポイントへのドライニードリング
  • 反応性の高い筋のパターンが選択された症例でのトリガーポイント注射
  • 後頭部優位の痛みで神経の関与が示唆される場合の後頭神経ブロック
  • 慢性例で慎重に選ばれた患者さんへのボツリヌス毒素注射(適応・保険の取り扱いは医療機関にご確認ください)

リハビリテーション

  • 頸部の運動制御が乏しい場合の深部頸屈筋トレーニング
  • 肩甲帯の過負荷が明らかなときの肩甲骨周りの安定化運動
  • ストレス管理とリラクゼーションの取り組み
  • 起床時に症状が強いときの寝姿勢と枕の見直し
  • 一時しのぎの治療を繰り返すよりも、段階的な再コンディショニングを優先する

危険な兆候:すぐに受診すべきとき

緊張型頭痛の多くは良性とされていますが、頭痛は神経・血管・感染・炎症性疾患の症状として現れることもあります。危険な兆候の評価が常に最優先となります。当てはまる項目がある場合は、迷わず119番(救急車)または救急医療機関にご連絡ください。

頭痛のメカニズム
僧帽筋上部からの関連痛

僧帽筋上部のトリガーポイントは、こめかみや眼窩後方へと痛みを放散することがあると報告されています。

後頭下筋群の関与

後頭下筋群の機能不全は、後頭部から前頭部へと回り込む頭痛のパターンに関与しやすいと議論されています。

SCMからの関連痛

SCMのトリガーポイントは、前頭部・顔面・耳に関連した重なりを生じ、診断を複雑にすることがあります。

顎と頭の連動

咬筋と側頭筋の過負荷は、こめかみ・顎・顔面の痛みを頭痛像に加える形で関与することがあります。

まとめ
  1. 緊張型頭痛は頻度の高い一次性頭痛であり、頸部や顎の筋にあるトリガーポイントが症状像に関与していることが少なくないと報告されています。

  2. 僧帽筋上部・SCM・後頭下筋群・側頭筋・咬筋・頭半棘筋などの筋は、それぞれ固有の関連痛パターンを持ち、互いに重なり合うことが多く見られます。

  3. 緊張型頭痛と片頭痛は重なり合うことがあり、教科書通りに分類できる症例ばかりではなく、混合型のパターンを示す方も少なくありません。

  4. 治療は、活動性のトリガーポイントへの取り組みと、それを再活性化させる背景因子(姿勢・食いしばり・ストレス・睡眠・作業負荷)への取り組みを併せて進めると、効果が得られやすいと考えられています。

  5. 人によって頭痛の感じ方や反応は大きく異なるため、ご自身に合うやり方を医療者と一緒に見つけていく形が現実的です。

  6. 危険な兆候(雷鳴頭痛、神経症状、発熱と項部硬直、50歳以降の新規頭痛、外傷後頭痛など)を伴う頭痛は、筋に由来する説明を採用する前に、必ず除外する必要があります。