高出力レーザー療法とは
高出力レーザー療法(HILT)は、皮膚の上からレーザーのエネルギーを照射する、医療者が行う痛みの治療法です。発表されているプロトコルには、1064 nmのシステムや、810/980 nmを用いる高出力機器があります。低出力レーザー療法やレーザー鍼とは、区別して考える必要があります。
筋肉の痛みについて最も直接関係する研究は、僧帽筋を対象としたものです。リハビリテーションにレーザーを加えると、痛みや首に関連する機能障害にいくらか上乗せ効果があったと報告する試験もあります。筋原性の顎関節症、肩峰下の痛み、慢性腰痛の研究は、それぞれの部位に限った応用を検討する根拠になります。
役に立つレーザー治療とは、体を動かすことや、やりにくかった活動を少しでも楽にこなせるよう手助けするものです。その改善は、運動プログラムとあわせて評価していく必要があります。
治療は、はっきり定めた臨床上の問題と、「首を回す」「手を伸ばす」といった活動目標を軸に選びます。訓練を受けた医療者が機器のプロトコルを記録し、目を保護し、皮膚を観察しながら、リハビリテーションへの反応を追っていきます。
レーザーの照射方式とプロトコル
連続照射
- ビームを作動させている間は、エネルギーが途切れずに照射されます。
- 照射量は、出力・照射時間・照射面積の三つを合わせて表します。
- 設定を選ぶ出発点は、病態の種類と診察した部位です。
- ハンドピースの動かし方と皮膚の観察は、機器のプロトコルに沿って施術者が行います。
- 出力とあわせて、照射した範囲と時間も施術者が記録しておきます。
パルス照射
- エネルギーはパルス状に送られ、パルスとパルスの間には休止期間があります。
- ピーク出力、平均出力、パルスのタイミングは、それぞれ分けて記録します。
- 2025年の上部僧帽筋の研究では、15 Wの機器を用い、30 kHz・デューティ比20〜50%で照射したと報告されています。
- このプロトコルでは810/980 nmの2波長を使い、上部僧帽筋の上を走査しました。
- 照射条件は、実際に使う機器と適応に合わせて担当の医療者が設定します。
治療で何が起きるのか
この治療では、物理的な条件を定めたうえで光を照射します。そのうえで、診察を通じて痛み、機能障害、動きの変化を追跡します。個々の生物学的な機序がどれだけ効果に寄与しているかは、まだわかっていません。
光の届け方
温熱作用
光生体調節(フォトバイオモジュレーション)
痛みと機能
対象を明確にする
レーザーのプロトコルを選ぶ前に、評価した病態と痛む部位を特定します。
照射量を記録する
機器、波長、出力、照射時間、照射面積を記録します。
活動での成果
同じ動作や作業をくり返し、追加した治療が役立っているかを判断します。
経過観察
治療期間中の痛みと機能の変化をもとに、リハビリテーションと追加の治療を調整します。
研究で用いられた条件と照射量の選び方
波長
出力
エネルギー密度(フルエンス)
1回あたりの総エネルギー
治療回数
1回の治療時間
臨床エビデンス
僧帽筋の筋筋膜性疼痛 — PMID 25274197・41255736
筋原性の顎関節症(TMD)— PMID 34174507(2021年オンライン公開、2022年誌面掲載)
肩と腰の病態 — PMID 33400012・24178907
ドライニードリング後の痛み — PMID 41914595(2026年)
痛みの軽減
活動の制限
可動域
治療の流れ
治療の対象を確かめる
皮膚を確認し、目を保護する
記録に残るプロトコルを選ぶ
レーザーを照射する
不快感があればすぐに対応する
動きを確かめ、リハビリテーションを続ける
HILTが検討される場面
長引く僧帽筋の筋筋膜性疼痛
筋肉に由来する顎の痛み
肩峰下の肩の痛み
慢性腰痛
針を使わない治療を希望される方
はっきりした活動目標がある方
禁忌と副作用
治療を見合わせる理由
治療前の確認事項
副作用
高出力レーザーは、目や皮膚を傷つけるおそれがあります。訓練を受けた施術者が機器の安全手順を守り、不快感の訴えにすぐ対応します。なお、小規模な有効性の試験だけでは、まれな有害事象がどのくらいの頻度で起こるかを正確には示せません。
温かさ
皮膚の赤み
痛みの増強
皮膚のやけど
HILTと他の治療の比較
vs 低出力レーザー(LLLT)
vs 体外衝撃波療法(ESWT)
vs ドライニードリング
vs 治療的超音波
治療と再評価
10回
運動療法
12週
ここで検討した研究のうち、特定の筋に関する直接的なエビデンスが最もはっきりしているのは、運動療法や理学療法と併用したHILTによる僧帽筋の筋筋膜性疼痛の治療です。
HILTのプロトコルは、波長、出力、パルス設定、走査範囲がそれぞれ異なります。これらはまとめて記録しておきます。
動いたときの痛みや、日常の活動をどれだけ楽にこなせるかが、効果を判断する実用的な目安です。
顎・肩・腰の研究は、部位や病態ごとに治療を検討する根拠にはなります。もっとも、特定の筋への直接的なエビデンスが最も明確なのは僧帽筋です。
ある上部僧帽筋の試験では2週間で10回の治療を行い、治療終了時に痛みと機能を再評価しました。
診断、エビデンス、活動目標がかみ合えば、HILTは補助療法の選択肢になり得ます。その場合も、能動的なリハビリテーションは治療計画の柱として続けます。
目の保護と皮膚の観察は欠かせません。焼けるような感覚や痛みの強まりがあれば、照射量を上げるのではなく、いったん止めて見直します。